カレーを勝手に食べられた

By 編集部員(籠)

実は、辛いものが食べられません。

幼き頃から、家の料理は超薄味という環境で育ってきたからか、基本的に調味料全般が好きじゃありません。とりわけ辛いものは駄目。世の中には辛い食べものが好きな人がいる、ということを知ったのは、社会に出てからのことでした(辛いものを好む人って、マゾ的な感覚を楽しんでいるだけだと誤解していたんです。ごめんなさい)。

ところが、ダイジェストに入社し、社会の先輩方たちと会食する機会が増えてくると、食べ物の好みを押し通すということが、なかなか難しくなってきます。しかもロンドン在住の日本人の方々と食事となると、韓国料理だとかタイ・パブなんていう辛い食べものを提供する場所で機会を持つことが結構多いのです。学生時代なら、そうした席で、「僕は辛いもの食べられないんで、今日はお米だけ食べようと思います」なんて言ってもおもしろがってもらえたのですが、お仕事でお付き合いある方との食事の席ともなると、そうもいきません。

ということで、辛いものを食べる練習をすることにしました。

練習するにあたって、一番作るのも食べるのも簡単そうなのは、まあカレーかなと。週末に、カレーの王子様(甘口)を買って、合わせて7食分、鍋いっぱいに作ったんです。牛乳とすったリンゴをいっぱい入れて、さらに甘くして。いや、大変美味しゅうございましたよ。そして残り6食分を1週間かけて完食し、来週末にはこの辛さのレベルをちょっと上げたものを作って、舌を徐々に鳴らしていこうという計画でした。

でも、次の日に家に帰ったら、そのカレー、勝手に食べられていた。

ルーは半分以上なくなり、鍋には誰かのフォークが突き刺さってました。フラットメイトの誰かが勝手に食べたんでしょうが(ちなみにこんなフラットに住んでいます)、1人1人に問い質しても、誰もが「自分ではない」と言い張ります。でも誰かが嘘をついているということには絶対に間違いないのだけれど。

そんな誰が口付けたのか分からない料理、気持ち悪いから、残ったルーは、もったいないけど、庭に捨てちゃった。

料理だけに、後味の悪さを残したまま、カレー計画はあえなく終了。「辛いものなんて、別に食べられなくてもいいや」と、冬風が吹き荒ぶ夜にロンドンの庭で誓ったのでありました。(籠)

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