「ミレイの傑作『オフィーリア』の正体とは」余話

まさに年の瀬。英国ニュースダイジェスト編集部の(籠)です。おやつを食べる時間には既に外が暗い季節となりました。というか昼間でさえまともに太陽の気配を感じない。

だから英国の冬って、どこかのレストランか誰かのお家で飲み食いするか、芸術鑑賞する機会が多くなるんですよね。ということで、本題。今年11月に、弊誌では英国の美術史における最高傑作の一つ「オフィーリア」のモデルとなったエリザベス・シダルという名の女性の人生に迫る特集記事を組みました。未読の方はこの機会にぜひ。

悲恋を生きたこのシダルの人生はエピソードがいっぱいで、実は特集記事では割愛してしまった部分も多いんです。例えばシダルが文字通り死ぬほど愛した、浮気者のロセッティにまつわる話。数々の女性と浮き名を流した彼は、ジェーン・モリスという名の人妻とも不倫していたと伝えられています。このジェーンさんの夫は、日本でも有名なデザイナーのウィリアム・モリス。ロセッティとモリスは共同生活を送ったこともある言わば親友同士です。いわゆる三角関係ですね。ロセッティについて調べると、こんな話ばかり出てきます。

さらに、シダルがモデルを務めた「オフィーリア」の作者ジョン・エヴァレット・ミレイにも恋愛スキャンダルが。

「オフィーリア」の作者ジョン・エヴァレット・ミレイ

テート・ブリテンの前に設置されているミレイの銅像

ミレイは、彼をずっと支援してきた美術批評家のジョン・ラスキンの妻を言わば奪う形でこの女性と結ばれています。しかも、ラスキンの妻がラスキンとの結婚を無効とする訴えを起こしたときと前後して、ミレイはラスキンをモデルとした絵を描いている。すごい緊張感あふれる人間関係だ……。しかもこの女性は結局ラスキンと別れ、ミレイと再婚を果たしています。

こうしたエピソードも思い出しながら、改めてテート・ブリテンに展示中の「オフィーリア」を鑑賞してみると、絵に描かれた女性の絶望を浮かべたような表情が、また違った意味を帯びてくるかもしれません。

ちなみに12月22日からは、東京・渋谷のBunkamuraで開催されている「英国の夢 ラファエル前派展」でもミレイやロセッティの作品を鑑賞できるみたいです。

今年もあともう少し。皆さん、クリスマスをめいっぱい楽しみましょうね。それではごきげんよう。(籠)

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