情熱的でスキャンダラスなラファエル前派を紐解く、ロッセッティズ展。

現在、テート・ブリテンで開催中の「ロッセッティズ(The Rossettis)」展。ラファエル前派の中心人物であったダンテ・ガブリエル・ロセッティ(以下ガブリエル)とその兄弟、妻、愛人など、本人を取り巻く周辺人物の作品(絵画、詩など)や時代背景を紐解くエキシビションです。

ロセッティが活躍していたのはヴィクトリア時代のイギリス。19世紀のイギリスの美術界ではイタリアのルネサンスを代表するラファエルのような古典主義の作品が礼賛されていました。そんな時代にロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに通っていた学生、ガブリエルたちはラファエル以前の芸術に理想を見出し、回帰しようと結成したのがラファエル前派です。

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The Rossettis展の入り口。入り口からラファエル前派の雰囲気がムンムンしています

個人的にラファエル前派のアンニュイで憂いが漂い、なんとなくナルシストっぽい雰囲気に自分をその世界観に入り込ませるのが好きなので、このエキシビションを楽しみにしていました。

下世話な話ではありますが、この一派は多方向に愛が折り重なる情熱的でドロドロの人間関係が背後にあります。ラファエル前派の作品は、深い色使いで一見静かな面持ちのものが多いのですが、そういったバックボーンがあるせいか、ポートレートで言えばその描かれている人物の内から湧き立つ、ものすごいエネルギーを感じさせられます。
主な人物の詳しい人となりやエピソードなどは1623号の特集「ダンテ・ガブリエル・ロセッティ」をご覧ください。

ラファエル前派の相関図

ラファエロ前派の相関図。(昭和の)昼ドラ顔負けの入り組んだ人間関係です

ガブリエルは4人きょうだい。姉マリア、弟ウイリアム、妹クリスティーナと共に、イタリア言語学者の両親の勧めで、執筆や絵画などに幼少時代から親しんできました。中でもクリスティーナは15歳で初めて詩を発表、以降900もの詩を発表し、今日まで幅広く知られておりその知名度はきょうだいのなかで一番のようです。

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床の丸い部分に立つとクリスティーナの詩を聞くことができます

エキシビションの序盤はきょうだい全員がアーティストである、「ロセッティズ」の若かりし頃の活動に焦点が当てられます。

ガブリエルはラファエロ前派結成後、仲間内で絵のモデルとして人気だったエリザベス・シダルと公私ともにパートーナーに。お互いに影響を高めながら一緒に制作活動をしていくのですが、2人の間にはファニー・コーンフォース、ジェーン・モリスの影がちらつきます。ガブリエルは出会いから10年以上経ってシダルとようやく結婚。しかし、最初の妊娠で流産したことによるうつ病や、ガブリエルの浮気に悩んだシダルはアヘンチンキのオーバー・ドーズにより結婚2年目に死去。シダルの死に深い後悔の念に駆られたガブリエルは、彼女の死を詠んだ未発表の詩を亡骸とともに埋葬。しかしその7年後、その詩が素晴らしい出来だったことが頭から離れられないガブリエルは妻の墓を暴いてしまいます。

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モデルになっている人物の人生を知りつつ鑑賞すると、ますます興味深くなります

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ガブリエルのデザインによる壁紙。結婚後、2人の新しいDrawing Roomの壁紙となるはずでしたが未完成のままに。ガブリエルが遺したスケッチやノートにより再現されました

ガブリエルの生涯のミューズはウイリアム・モリスの妻、ジェーン・モリス。観劇のために訪れていたオックスフォードで、ガブリエルとエドワード・バーン=ジョーンズに声を掛けられ、ラファエロ前派の画家たちのモデルになったのが出会いのきっかけ。そこから、ガブリエルが死去するまで長い間ミューズとしてモデルを務め、そして不倫関係が続いていました。

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ガブリエルの写真撮影のモデルも務めていたジェーン。当時の撮影はモデルは長い間じっとしていなくてはいけないので、こんなにたくさんのポーズを撮るにはとても時間がかかったはず。ジェーンに対する深い愛を感じ得ずにいられません

1848年に結成されたラファエル前派は、1853年にジョン・エヴァレット・ミレイが対立していたはずのアカデミーの準会員になったことにより、その数年後に事実上解散となりました。決して長くなかった活動期間ですが、イギリスらしいとも言えるこの展覧会で、ヴィクトリア時代に浸ってみてはいかがでしょうか。おすすめはラファエル前派関連の記事で予習をしてから鑑賞することです。2倍、3倍にも楽しめること間違いなしです。(縞)

ラファエル前派関連

The Rossettis
Tate Britain
2023年9月24日まで
http://www.news-digest.co.uk/news/listing/details/1690-the-rossettis.html

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