第30回 ビジネス日本語スピーチ・コンテストが開催

2月12日、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)において、第30回ビジネス日本語スピーチ・コンテスト(ジェトロ・ロンドン事務局、SOAS主催)の本選が開催された。日本語の学習を通じて、日本のビジネス文化理解と日英ビジネス交流の発展を目的とするこの大会の参加資格者は、日本語を母国語としない欧州連合(EU)加盟国または英国出身であること。日本のビジネス文化について日本語でスピーチを行うことで、出場者たちはスピーチの内容や日本語能力、質疑応答能力などを試される。

今回は記念すべき30回目とあって例年以上の応募数があり、当日会場に押し寄せた観覧者も皆口をそろえて「レベルが高い!」と言っていたのが印象的で、大いに盛り上がりを見せた大会となった。

激戦を勝ち抜いた7名のファイナリストのうち、見事優勝を飾ったのはオックスフォード大学内の日産研究所で日本と中央アジアの政治や経済について研究しているオウ・チコウさん。目を閉じて聴くとまるでネイティブと変わらない流ちょうな日本語で、中央アジアにおけるビジネス・チャンスをテーマに話を繰り広げた。

Mr Wang

オウ・チコウさん

このトピックを選んだ理由は、昨夏のインターンシップで中国の海外投資ファンドの研究室に入り、中国から日本に求める連携意欲の強さが一番印象深かったからだと説明。研究テーマは「日中企業の第三者国市場における連携」で、数ある国・地域の中でも中央アジアのポテンシャルが最も高いと発表した。日本は冷戦以降、中央アジアへ経済支援を行っていたにもかかわらず、同地域への企業進出が遅れており、その理由を「日本で海外投資といえば製造業、その中でも自動車製造が最も象徴的な分野である」と分析。近年の中央アジアの変動は中国の存在が大きく増したことで従来の製造業移転にとらわれず、ビジネス面で同国の存在を利用することで、インフラとそれに基づいた物流産業、エネルギー分野、観光業に目を向けるべきではないかと提案した。

第2位に輝いたのは、ベン・ジョーンズさん。約30年間、英国を拠点に日英両国をはじめ世界各国の企業、政府機関や多岐にわたる分野で通訳の仕事をする中で、通訳者に求められる素質、必要な条件など自身の経験に基づいた具体例を挙げて、良い通訳者の見つけ方についてスピーチした。まず、適切な通訳者を見つけられない理由に、「日本語と英語ができても通訳ができるわけではない」という大前提を知らない人が多いと指摘。

ベン・ジョーンズ

ベン・ジョーンズさん

また、通訳側の必須条件として、通訳内容の専門的な事柄を理解していること、記憶力、趣旨の要約が出来ること、メモ取りのテクニック、相手の立場を意識した表現の選び方や信頼できる人柄であることも述べた。さらに、当日の席も、聞こえない、見えない場所だとミス・コミュニケーションが起こりやすいため、話者のより近くに座ることが理想であると語った。

第3位の英系のゲーム会社に勤めるサミー・ナレーニアンさんは、欠員補充での出場となり、日本の働く文化のイメージ改善についてスピーチ。日本語を独学で習得し、現在の会社では日本語を使う機会のないサミーさんだが、日本のニュースで話題に挙がる「過労死」や「ブラック企業」という単語は英語にはないワードで、日本のイメージを悪くする原因の一つであると話した。

サミー・ナレーニアン

サミー・ナレーニアンさん

残業のない現在の会社で働いているからこそ仕事の後のプライベートの時間を有効に使え、サミーさんの日本語の上達もこの結果だと自負。ただ、日本でも少しずつ環境の改善が見られるので、働く人に優しい企業が増えることを願うと締めくくった。

特別賞は日本にいる外国人の日本社会への順応について語ったパランジャベ・ヴィヴさん。

日本語スピーチコンテスト

左から2位のベン・ジョーンズさん、優勝したオウ・チコウさん、3位のサミー・ナレーニアンさん。チコウさんは受賞後のインタビューで「優勝できるとは思わなかった」とうれしそうに語った

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