メディア・アーティスト落合陽一さんのトーク・イベント、ロンドンで開催
6月21日(金)に大和日英基金(Daiwa Foundation)の主催で行われたメディア・アーティスト落合陽一さんのトーク・イベントに行ってきました。落合陽一さんは「デジタルネイチャー」というご自身の価値観に基づいた研究やアート作品を発表しており、現在ロンドンのバービカン・アートギャラリーで開催中のエキシビション「AI: More than Human」にも参加されています。
18:00からスタートした今回のトーク・イベントには、老若男女さまざまな方がいらっしゃっていました。私の隣の席に座っていたのは、素敵なベレー帽をお召しのイギリス人のおじ様。今日は若い世代のカルチャーに興味があって来たとのことでした。また、現在ロンドンの大学院に留学中という日本人の男性は、落合さんの大ファンで、なんと今日は彼のトーク・イベントをはしごしてこちらに来たそうです。
今回のトーク・イベントのテーマは、テクノロジーを使い、人・モノ・社会をどうやってつなぐかということでした。司会進行役として、BBC Digital Planetのスタジオ・スペシャリスト、ギレーヌ・ボッディントンさんも登壇されました。
ひと口にテクノロジーと言ってもさまざまですが、この日、具体例としてあがっていたのはAIや3Dプリンター、ロボットなどの活用例で、いくつかのプロジェクトが説明されました。
その一つが、3Dプリンターを使って作家の乙武洋匡さんに義足を制作するプロジェクト。3Dプリンターを活用すれば、低コストで調整や複製が容易な義足が制作可能とのことでした。また、聴覚障害のある人が振動で音楽を楽しむことができる「耳できかない音楽会」も興味深い内容でした。つまり、技術によって身体を拡張することが可能だと落合さんは語っていました。
AIやロボットが高度に発達した未来というと、明るい部分だけではなく、テクノロジーに人間がコントロールされるといった悲観的な側面を想像してしまうかもしれません。しかし、落合さんは未来を良い意味で楽観的に思い描いていると語っていたのが、この日のお話の中で最も印象的でした。
人口減少には、ロボットの使用や、他国の若者をリモートで繋ぐ技術を活用することで対抗可能であり、身体の障害も前述のようにテクノロジーで健常者に限りなく近づけることができる――。
淡々と語っていましたが、私を含め、会場にいた皆さんの心に力強く響いたのではないでしょうか。トークの終了後には参加者との交流の時間も設けられ、和やかにイベントは締めくくられました。
落合さんのアート作品の最も大きな特徴は、デジタル技術が用いられているということですが、超音波を使ってモノを浮かせたり、空間に像を結んだりする様はまさに魔法のようだと形容されます。
落合さん本人も時折引用していますが、SF作家アーサー・C・クラークの提唱したクラーク三法則の中に、「高度に発達した科学は魔術と見分けがつかない」という言葉があります。
技術は使い方を間違えれば、大きな災いをもたらすことがあるかもしれませんが、できれば魔法のように世界中の人々をつないで私達を助けてくれるものであって欲しいですね。
落合さんの作品は、現在バービカン・アートギャラリーで開催中のエキシビション「AI: more than Human」で観ることができます。テクノロジーと現実の融合を体現した作品に会いに、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。(乃)
「AI: More than Human」展は8月26日(月)まで
http://www.news-digest.co.uk/news/listing/details/1485-ai-more-than-human.html
エキシビション「AI:More than Human」 八百万の神がAIの未来を明るくする?
キュレーター 内田まほろさん/チームラボ 谷口仁子さん インタビュー(英国ニュースダイジェスト1533号掲載)
http://www.news-digest.co.uk/news/features/19046-ai-more-than-human.html