語学だけじゃ、半人前? 大学生の日本語スピーチ・コンテストに行ってきた。
2016年03月4日 by(遊)
皆様こんにちは。英国ニュースダイジェストの(遊)です。梦さんが最近書き終えた「ビジネス日本語スピーチ・コンテスト」の編集日記が記憶に新しい中、この度「大学生のための日本語スピーチ・コンテスト」に行って参りましたので、ご報告させていただきます。
簡単に説明すると今回の大会では、スピーカーがビジネスマンではなくイギリスまたはアイルランドの大学及び大学院で日本語を学んでいる学生になります。テーマ選択もビジネスに限らないため自由。またスピーチ部門に加えて、個人プレゼンテーション部門やグループ・プレゼンテーション部門なども。持ち時間のすべてを使って熱くギネス・ビールについて語ったり、ロンドンの地下鉄の歴史について丁寧に説いて観客を唸らせていたり、はたまた関西弁交じりの日本語で演劇チックに比較文化論論の発表をしてくれたりと、学生ならではの熱意と強い個性がぶつかり合っていました。
日本語レベルもさることながら、個人的には同じ大学生として、欧州の学生たちのプレゼンテーション力とスピーチのレベルの高さには頭が下がります。小学生のときから授業内で鍛えられているんですものね……。効果的なスライドの使い方、質疑応答のときでも咄嗟にジョークを交えた対応をする同年代の学生たち、しかも第二言語。
「私たちが英語で同じことをやれって言われたらどうしよう」と勝手にあらぬ想像して足をすくませる梦さんと私(取材に集中しよう)。とにかく年齢も第二言語を学んでいることも自分と似たような立場だからこそ、余計に彼らの努力と凄みが痛いほど伝わりました。
そんな選りすぐりな学生たちの中、ひと際チャーミングな笑顔で会場を魅了していたのが、リーズ大学で日本語を専攻しているマクルヒルさん。彼は他言語を学ぶ上で、ただ言語を習得するだけではなくその国独自の非言語コミュニケーション方法も深く理解すべきだと提案しました。例えば彼が日本の大学に留学していたときのエピソードからひとつ。マクルヒルさんが来日して間もない頃、担当教授に廊下で相談事をしていたときのこと。こちらは一生懸命話しているのに、教授がずっと自分の足元ばかりを見て話をするため、嫌われているのではないかと勘違いしてしまったようです(後々、日本人は欧米人とは違いアイコンタクトを避けると知ったそう)。
私たち日本人が他国に行ったとしても、きっと同じような経験がありますよね。郷に入れば郷に従えといいますが、確かに他国の非言語コミュニケーション方法を得て、初めて現地の礼儀に基づいた対等な会話ができるのかもしれません。他にも、「日本人に褒められたときは、手を顔の前に持ってきて左右に振りながら、そんなそんなと言わなくてはなりません」と実際に同じ動作を行って、観客の笑いを誘っていました。
実は思わぬ偶然から日本語を学ぶことになってしまったマクルヒルさん。「中学生のとき、スペイン語の授業を取りたいと思っていたんですけど、授業申請することをすっかり忘れていて。その時クラスにたまたま空きがあった日本語を選択することになってしまったんです」。
ひょんなことから出会ってしまった異国の言葉が彼の人生を変えることになるとは思いもしなかったでしょう。場所も知らなかった日本が、彼にとって留学をし、今では大学卒業後に日本で働き、住むことすら前向きに計画するほど大好きな国になりました。
「来週、日本語検定で敬語の会話試験があるので緊張しています。僕にはとても難しいので」。最後まで日本人的な謙遜をして、何度も会釈をしながら接してくれる姿。彼自身がやはり、スピーチの内容を一番体現しているのだなと感じました。(遊)