「カワイイ」と言われたことのない日本人女性に向けてケンブリッジ学生がエールを送る

2015年03月03日 by 編集部(籠)

皆様お久しぶりです。英国ニュースダイジェスト編集部の(籠)です。先日、ロンドンで開催された「大学生のための日本語スピーチ・コンテスト」を観覧してきて、ものすごく面白かったので皆様にも報告申し上げます。

最初に簡単に説明しておきますと、この大会では、英国そしてアイルランドにある大学及び大学院で日本語を学んでいる学生たちが、その日本語能力を競い合います。今年の大会には、19大学から77人が応募。世界的にはマイナー言語扱いされがちですが、日本語を学ぶイギリスやアイルランドの学生って、意外と多いんですね。

本選に出場する人たちは本当に日本語が流暢で(どれだけ流暢かは、こちらの動画を観ていただけたらと存じます)、しかもスピーチのテーマが斬新そして深い。フェミニストを自称する出場者が日本の女性解放運動家である平塚らいてうの「元始、女性は太陽であつた」を引用したり、日本のバラエティー番組における女性タレントの体重対決みたいな企画は英国では絶対に許されないと訴えるスピーチがあったり。もう目から鱗が出まくりです。

中でも印象に残ったのが、ケンブリッジ大学(ご存知の方も多いかと思いますが、天才物理学者のスティーブン・ホーキング博士や先日アカデミー主演男優賞を受賞した英俳優エディ・レッドメインなどを輩出した超名門校です)のサカリ・メシマキさんのスピーチでした。なんてったって、スピーチの英題が「Burikko vs Career Women(ぶりっこ対キャリア・ウーマン)」ですからね。そそるでしょ?

メシマキさんは、日本の「女子力」という言葉を初めて聞いたとき、そのまま直訳して英語で言うところの「ガール・パワー」という意味だと解釈したんだそうです。それが後に「大きな勘違いだったということが分かった」。英語で「ガール・パワー」というと、ほとんどのイギリス人は「自立していて、リーダー・シップを持つ女性」の姿を思い浮かべる。一方で日本語の「女子力」が意味するところは、「居酒屋で男性の皿にサラダを盛ること」。このエピソードを端緒として、メシマキさんは日本における特異な女性の理想像について論じていきます。

実はメシマキさん、日本の大学に留学経験があるんだそうです。その日本留学時代に大学のダンス・サークルに所属していたのですが、このサークルでは部員の8割が女性。でも部長は代々男性が務めていたそうで、その理由は「女子が部長になると男子部員がついてこないから」。しかも、このサークルで何でも率先して行動を起こす女性の先輩は周囲から「キング」というあだ名で呼ばれていたらしい。一方で遠慮した素振りを見せてばかりの女子部員は「かわいい!」とチヤホヤされていた。やがてメシマキさんは、「かわいい」とは非力であることを評価する日本独特の表現であると認識するに至ります。

こうした日本の女性を取り巻く状況を踏まえた上でのメシマキさんの提言がすごい。彼曰く、モジモジしている女性を「かわいい」と呼ぶのはもう止めよう。代わりに彼女たちには「頑張って」と言うべきだ。そして、リーダーシップを発揮する女性を「かっこいい」と褒め称えよう。

この言葉を聞いて、背中を押された気分になる人、救われた気持ちになる人、もしくは「あいたたたた」と思う人がいっぱいいるんじゃないかな。メシマキさんの提言を、コンテストの会場に居合わせた観覧者だけでなく、もっと多くの人と共有できたらいいなと思い、筆を取りました。(籠)

大学生のための日本語スピーチ・コンテスト

「ぶりっこ対キャリア・ウーマン」と題したスピーチを行ったケンブリッジ大学のサカリ・メシマキさん

前の記事:
次の記事: