2021年、スタッフの夏の思い出 – 現地レポート

2021年のロンドンの夏。新型コロナによる制限はあったものの、それなりに出かけることができました。ヤッター

イングランドは年明けから数カ月ロックダウンだったので、その反動で(?)気をつけつつもひたすら出かける人がいたり、反対にこういうときだからこそ、と自宅で生活する人がいたり、とさまざまな過ごし方があったようです。

さて、我々ダイジェストのスタッフたちはどんな夏を過ごしたのでしょう。

①桃アディクション(Kさん)

この夏は、まだワクチン接種が完了していなかったこともあり相変わらずお家にいる時間が多かったです。

そんな日々の中、私を熱狂させたものがひとつありました。それは桃……。

なぜか今までイギリスの桃を食べたことがありませんでした。多分、渡英間もない頃、スーパーで桃だと思って買った果物が、プラムだったことを根に持っていたせいでしょう。そんな私に突如、空前の桃ブーム到来。故郷、福島のデリシャスな桃にはもちろん到底敵わないものの、小ぶりでみずみずしく素朴な甘さが飽きのこないおいしさ。くる日もくる日も桃を食べ続け、冷蔵庫の桃が切れると不安になり買いにいかないと気が済まない。なんてアディクティブで罪深いピーチ。

いちごに生クリームをかけた、ストロベリー・クリームなるデザートがイギリスにはありますが、それの桃バージョンを作ってみたり、カスタードクリームをかけてみたり、ブッラータチーズとフラットピーチのサラダを作ってみたりと、楽しみ尽くした感があります。

気づけば夏も終わり、桃の旬も終了……最近切ない思いをしております。秋の味覚も楽しみたいです。

オーガニックショップで量り売りしていた桃がおいしかったです

②日本で働いていた時の友人と同窓会! Plymouthに行ってきた(Yさん)

土日のみの予定だったのですが、せっかくの久しぶりの遠出だからと思い、お休みをいただいて友人に会う前に北コーンウォールのTintagelの方で1人旅をしました。

コーンウォールは初めて行ったのですが、やはり車があると便利なところですね。

電車とローカルバス(時には2時間に1本⁉)を乗り継ぎロンドンから7時間ほどかけて到着。この時はイギリスでは貴重な夏日真最中だったので、ビーチが最高! 1日中海岸沿いのpublic foot pathを歩いていました。

ロックダウンもあり、旅行らしい旅行はこの時が1年半ぶりくらいだったので、いつも以上に自然の中にいること、新しい土地に来たことに胸がワクワクしました。

イギリスとは思えないほどの透き通った海。そのすぐそばを歩けるfoot path(途中アップダウンが激しい所もありくじけそうになりましたが)。夢中になって、毎日4、5時間歩き通した結果、見事に酷い日焼けをしてしまいました。

部活終わりの学生のような日焼けをこの年になってすることになるとは。。でも、コーンウォールといえば! のおいしいパスティをランチに(毎日食べていました)、すがすがしい空気と旅行先で出会う人との会話でエネルギーをチャージしてきました。

もちろん友人との再会も最高です。昔話に花が咲き、BBQをしたり友人宅でお酒を飲んだり。

この長い週末で一気に夏を満喫できたので、イギリスの短い夏に文句は言いません。

これからも安全に友人に会える機会が増えることを願います。

③アロットメントでバーベキュー(Mさん)

今夏はまだコロナの影響もあるので、ステイケーションを満喫することに。特集で掲載したイーリーへ出かけたり、美術館のエキシビションに行ったり、20年ぶりにロンドン塔に出かけたり、それなりに充実していたと思うのですが、一味変わったイベントということで、フィンチリーにある知人のアロットメントでバーベキューをしたことはいい思い出です。

アロットメントとは、一区画を借りて野菜や果物などを栽培する市民農園のこと。そう、アロットメントのバーベキューで特筆すべきはもぎたての野菜をすぐに焼いて食べられることなのです。こんな新鮮なタイミングはまずありません。畑からはトウモロコシ、コジェット、大根(焼き魚にすりおろし大根で)。アロットメントの主人の友人の方が持ってきてくれたマリネのポークリブなどのお肉も絶品(キロ単位で購入されたそう)。ワイン片手に、次々と焼いていただいたものをパクパクとついつい食べ過ぎてしまいました。

いやー、自然の中でいただくBBQは本当に美味しかった。自然といえば、天気が安定していなかった日だったので、晴れ、雨、曇りと天候がくるくる変わる典型的なロンドンの天気でした。急に肌寒くなって、みんなでバーベキューの周りを囲って暖をとったり、ビニールハウスに駆け込んで雨をしのいだり、思いがけずプチアウトドアを楽しめたことも素敵な思い出です。

余談ですが、「具材はいろいろあるけど、私は一番焼きおにぎりが好きなんだよね~」と話していたアロットメントの主人の話が印象的でした(笑 / 注:お米はアロットメントでは栽培していない)。確かに、焼きおにぎりは日本人にとっては外せません!

④室内で言葉の旅(Aさん)

この夏はどこへも行かない代わりに、家にこもって日本語の本を読んでいました。それもミヒャエル・エンデの「鏡のなかの鏡」や堀江敏幸の「戸惑う窓」など、心の中を旅する作品ばかりを集中的に。そして自分では決してひねり出すことのできない美しい言葉の連なりにうっとりしながら、その波にどこまでも運ばれていく浮遊感を楽しみました。言ってみれば脳内海水浴とでもいうのでしょうか。

堀江氏の「戸惑う窓」は、窓をモチーフにした25篇の散文集ですが、そのなかに「世界の生成に立ち会う窓」と題したものがあります。これは、サン=テグジュペリが「星の王子さま」を捧げた、親友でジャーナリストのレオン・ウェルトについて書いた1篇です。ウェルトは美術評論家としても優れていたそうで、画家のボナールについてキラキラした文章を残しているのですが、堀江氏がそれを引用しながらさらに膨らませて解説しています。それはこんな風です。

 “ボナールの光には時間の堆積がある。流れるはずの時間が、塵のように、雪片のように降り積もって染み込み、解け入って、漠然とした光の総体を示す。光は光として抽象的に輝くのではなしに、絵筆を握って暮らしている人の内側から外側へ向かいながら粒子になる。時間が蓮池に溜まり、それが粉々に砕ける寸前で持ちこたえているモネの世界ともちがう。体内、室内、窓、それから室外へと進む生活の力線がボナールにはあって、光の粒のひとつひとつに、単なるカメラのレンズではない微細な「私」が散っているのだ。” 

(堀江敏幸「戸惑う窓」中央文庫から) 

 このあと堀江氏はこの雰囲気を保ちながらレオン・ウェルトその人の説明に戻っていくのですが、その入れ子式の箱のような、絵の中に描かれた絵のような文章の構成は、それ自体が「体内、室内、窓、それから室外へ」と流れ出るように作りこまれているようでした。

この夏は部屋から出ずに旅をしました、というお話のつもりで始めましたが、気がつけばもう夏も終わり。私はこのまま読書の秋に突入したいと思います。

⑤念願の……(Eさん)

ロンドンから電車で約5時間以上と、なかなか距離があって交通の便が悪いという印象から、いつかは行きたい場所リストにずっと入ってはいたものの、お蔵入りしていたコーンウォール。この夏にやっと行くことができました。

ダイジェストでも以前何度か取り上げたように魅力的な場所が沢山ありますが、中でも今回はイングランド最西端ランズ・エンド近郊にある野外劇場ミナック・シアターが一番の目的地でした。

ミナック・シアターは、地元の女性が断崖絶壁を切り開いてつくったという劇場で、舞台の背後には広大な海が見渡せます。観客席も石造りで、自然を生かした造りがとてもユニークです。

劇場に着くと、すでにバイオリン演者が会場をあたためていて、リピーターらしき観客は、座席に着くなりピクニック気分で持参したお弁当やお菓子などと一緒に会話を楽しんでいました。

この日は、演劇ではなく地元のミュージシャンによるコンサートが開催されていたためか、観光客より地元の観客が多かったように思います。大多数の方が歌詞を完璧に覚えていて、徐々に大合唱に。もちろん今回が初めての観客が取り残されないための工夫もされていました。地元愛とコーニッシュであるという誇りとプライドを強く感じられるコンサートでした。ギターとバンジョー、バイオリン、ベースの演奏が、時より聞こえる波の音とマッチしていて、とても幻想的でした。

コンサートも後半頃になると、はじめは案外快適だと思っていた石造りの座席に、やはりちょっと不快感を感じはじめ、防寒対策のために持っていた上着を、防寒用に使うか座席のクッションにするかで悩んだりしましたが、さすが何度も来ているであろう観客達は、防寒着はもちろん、クッションやひざ掛けなど、あらゆるグッズを持参していて、こなれた様子でした。私も野外シアターは初めてではなかったのですが、コロナ禍で家に引きこもっていた期間が長かったため、すっかり色々なことを忘れていました。野外シアターへ行く際は、防寒着とできたらクッションと膝掛けも持参することを、今後の教訓としたいと思います。

だんだん余裕も出てきて、よくよく辺りを見回すと、そこに座れるんですか?っという位置に座席があったり、そこに飲み物置いたら危ないですよ。っというような場所に水筒を置いている人がいたり、ヒヤヒヤする場面もありましたが、断崖絶壁にある野外シアターならではの開放感はとても特別でした。

次回もしまた行ける機会があったら、今度はここで演劇を観たいという願いを残しつつ、またお蔵入りしないように計画を立てたいと思います。

⑥リヴァプールに行ってきた(Hさん)

ロンドンから電車で2時間強かけて、リヴァプールに行ってきました。

リヴァプールといえば、ビートルズ結成の地。町中至る所にビートルズにゆかりのある名前のパブやお店がたくさんありました(サージェントペパーズバーやアビーロードバーなど)。

通称ビートルズストリートと呼ばれる、ビートルズが活動初期に演奏していたライブハウス「The Cavern Club」や数々の音楽バーがあるマシュー・ストリートでは、平日にもかかわらず、ほぼ全てのバーで生演奏がされてました。こじんまりとしていて、各々のバーが密接に隣接している中、爆音で窓が全開で演奏されている為、ここの道をあるいているだけで色んな曲が聴こえてきてテンションがかなりあがります。

The Cavern Clubの生演奏ではビートルズ以外にもThe WhoなどのUKバンドのカバーや、演奏者のオリジナルソングなんかも披露されていて、必ずしもビートルズの曲だけをする訳ではないそうです。もちろんビートルズ以外の曲も観客はノリノリで聴いていて、音楽好き同士の一体感やつながりを感じました。

色んなアーティストの実際に使用された楽器やレプリカ、サインなども飾っており、ビートルズ好き以外の人でも楽しめる場所なので、是非機会があれば、足を運んでみてはいかでしょうか。

 

⑦ナショナル・トラストでのんびり(Sさん)

ナショナル・トラスト(NT)の施設に桃アディクションのKさんと行ってきました。Kさんは同僚かつ、英北部ハロゲートの超僻地にあるラピュタみたいな施設を訪問したNT訪問仲間でもあります。今回はロンドンから日帰りでいける、なんて発音すればいいかわからない場所Ightham Mote」にお出かけしました。

公式サイトによると、

……どこかの裕福な人が作ったとされているが、誰なのかははっきりわかっていないそうな……その後所有者として初めて名前が記録された人物はThomas Cawneで、1360年くらいにここに移り住んできた

1360年って南北朝時代!? そのくらい古い、というか数世紀もよく生き残れたな、という時代を超越したあっぱれな建物のようです。

堅牢サイコー! お天気もサイコー!

実際目にしてみて、その麗しい姿にときめきました。外は古くて、固くて、石で。でも内装はとても可愛らしくて、ピュアな感じで、なんかそのギャップもよかったです。YouTubeでこの雰囲気、ぜひ一緒に体感いただけたら幸いです。

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