「Trance」プレス・ナイト

2007年6月12日 By 編集部員(月)

8日夜、鴻上尚史氏の舞台「Trance」のプレス・ナイトに行ってきました。ニュースダイジェストとしては、昨年2月に行われたリーディングから注目してきた芝居の本公演がついにオープンということもあって、気分はまるで子供の成長を見守る母親(日本の大演出家に対して偉そうですが)。否が応にも緊張感が高まります。

劇場は、リーディングが行われたのと同じBush Theatre。ロンドンのShepherd’s Bush駅の側にある、ちっちゃくて趣のある建物の2階にあります。劇場に入ると、驚くことに観客のほとんどは外国人。老若男女、あらゆる層の人々がいますが、共通しているのは、ピコピコっと演劇アンテナを周囲に張り巡らせているかのような雰囲気を漂わせているということ。要は、「私はメジャーなやつだけじゃなく、ロンドン中の良い芝居を探すのが趣味なのよ」という、ある種演劇マニアっぽい人々が多かったということです。あとはもちろん、批評家。批評家ってどうしてどこの世界でも分かりやすーい空気を身に纏っているんでしょうね。メモ帳を握り締め、舞台が始まるや否や、すごい勢いでガリガリ何かを書きなぐっています。この劇場は非常に小さくて、時に役者が客席通路に座ることもあるんですが、役者が真隣りに座っていてもひたすらガーリガリ。これは役者さん、かなり気になったんじゃないでしょうか……?

そして肝心の芝居。笑いを織り交ぜながらもピンと張り詰めた空気が胸を突き刺すかのような、温かさと痛々しさの同居した舞台でした。1098号のインタビューで鴻上氏も「喜劇でもあり、悲劇でもある」と述べていましたが、この白黒では割り切れない「何か」が英国の人たちにも伝わればな、と思います。

終演後は初日パーティーにもお邪魔しました。鴻上さんはとっても嬉しそう。3人の役者さんたちも、「ボロボロに疲れちゃったよ」と言いながらもその表情は満足気です。誰もがフレンドリーに舞台のこと、演技のことを語ってくれるので、図に乗った私はひたすらオレンジ・ジュースを飲みまくりながら(下戸なんです)深夜まで居残り、はっと気付いた時には周りは全員プロダクション関係者だったのでした……。ず、図々しい……。

まだまだ舞台は始まったばかり。きっと芝居はこれからも進化していくことでしょう。小さな小さな空間で繰り広げられる濃密なひと時を、興味のある方はぜひ一度、体験してみてください。(月)

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