第28回 ビジネス日本語スピーチ・コンテストが開催
多様性の浸透を目指す日本のビジネスが抱える課題とは
2月13日(火)、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)において、第28回ビジネス日本語スピーチ・コンテスト(ジェトロ・ロンドン事務所、SOAS共催)の本選が開催された。日本語の学習を通じて、日本のビジネス文化理解と日英ビジネス交流の発展を目的とするこの大会の応募資格者は、親が日本人ではない欧州連合(EU)加盟国在住者たち。日本のビジネス文化について日本語でスピーチを行うことで、出場者たちはスピーチの内容や日本語能力、質疑応答能力などが審査される。
8人のファイナリストのうち、見事優勝を飾ったのはリチャード・ブラッシュさん。「Unity in Diversity」というタイトルの通り、2020年東京五輪のビジョンの一つである、多様性と調和というコンセプトに注目。国際化が進むことで、日本と英国間のビジネスにどのような変化がもたらされるのか。また、日本企業において多様性は浸透しているのか、という点に焦点を当てた。
ブラッシュさんは、英国では、宗教、性的嗜好、障害などそれぞれ共通点を持つ社員が集まり支え合う、Diversity Network(ダイバーシティー・ネットワーク)という社内組織のシステムが定着していると説明。これと同様のシステムは日本でも存在するものの、現在は「女性の人材を活用する」という偏ったものになっているという。しかし昨今の少子化問題により外国人労働者を多く受け入れるようになっていくことで、人材も多様化するため、英国のようなシステムが構築されるのを期待すると述べた。また、一つの会社で様々なバックグラウンドの社員が働く中、いかにして調和を図るかというのも大きな課題だと述べた。
第2位は、昨年に続き2回目の出場となったキアラ・コマストリさんが、日本企業で働く外国人の労働状況についてスピーチ。日本にある日本企業に就職した外国人が長く働き続けられない理由として、やりがいのある業務を任せてもらえない、長時間労働、サービス残業、年功序列などの日本独特の雇用システムが影響している点を指摘。自分の専門分野を生かすことができずにいることにも着目し、これを改善するためには、社員一人一人のニーズ、特徴、専門性、キャリア志向に耳を傾け、考慮する必要があると訴え、もっと働きやすい日本を作っていきましょう、と締めくくった。
第3位になったのは、ウォーレン・スタニスラウスさん。英国の日本語教育の歴史において重要な役割を果たした名門パブリック・スクール、ダリッジ・カレッジの卒業生として、次世代のダリッジ・ボーイズ育成に励んでいるというスタニスラウスさん。ロンドン五輪の経験を踏まえ、2020年の東京五輪に向けて日本が観光立国となるための、自身の見解を発表した。
特別賞を受賞したチョウ・カコウさんは、外資系企業は、日本に進出する際、外部からでは見えにくい、日本人の価値観を認識する必要があると、いくつかの例を出してスピーチした。