オフィス近くのカギ屋さんが実はすごい社会貢献をしていた

2015年04月06日 by 編集部(籠)

英国ニュースダイジェストのオフィス最寄駅となるホルボーン駅のすぐ近くにあるカギ屋さん、ティンプソン。

Timpson

全国展開しているので、この店の看板を見たことがある人はきっと多いはず


実は僕、鍵をよく失くしてしまうんです。いや、スペアの方ですよ。日本にいる家族とか知り合いとかがロンドンまで来てくれて、うちに泊めたりするときに合いカギを渡すのですが、その渡そうと思った段階で「あれ? どこに置いたかな」って結局見つからずに新しくスペアをつくることになる。

で、そのときいつもお願いするのが、このティンプソンなんです。何しろ作るのがすんごく速い。支払いまで含めて1分かからないんじゃないか。イギリスでは珍しくテキパキした対応が気持ち良いです。

なんでいきなりカギ屋の話を持ち出したかというと、イースター休暇中に、自宅でホット・ミルクを飲みながら読んでいた「デーリー・テレグラフ」紙に、このティンプソンについての記事が載っていたからなんです。見出しは。「元受刑者に2度目のチャンスを上げるということ」。へっ?

このティンプソン、元受刑者を社員として積極的に採用するとの方針を掲げているんだそうです。全社員の1割に相当する400人前後の元受刑者を採用。そのうち10人はマネージャーを務めている。刑務所の社会復帰プログラムを利用して、「昼間はティンプソンで働き、夜には牢屋に戻って、翌日はまた出社」なんて人もいるんだとか。

一般的に英国における元受刑者の再犯率って6割前後らしいのですが、ティンプソンに就職した元受刑者で再び犯罪に手を染めたのはわずかに3人。出所後すぐに仕事させるというのが社会復帰を成功させるためのコツなんだとか。またほかの企業は前科のある人の採用を敬遠する傾向があるので、ティンプソンにとっては埋もれている良い人材を見つけやすいというメリットもあるよう。

ちなみに薬局チェーンのブーツ、ベーカリー大手のグレッグス、そして日本人におなじみのリコーUKといった企業でも、元受刑者の採用を増やすための取り組みをそれぞれ行っているみたいです。

イギリスでは総選挙が間近に迫っていますが、毎日の仕事や生活を通じて、自分たちができる範囲で、社会をより良くしようと様々な試みを行っている人って、実はいっぱいいるんですよね。あっ、そういえばそろそろまた鍵のスペアをつくらなきゃ。

ということで、皆様ごきげんよう。(籠)

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