プロムスを観に行った
2014年7月22日 by 編集部(籠)
暑中お見舞い申し上げます。英国ニュースダイジェスト編集部の(籠)です。イギリスにおける夏の風物詩、クラシック音楽の祭典プロムスに行ってきたので報告申し上げます。
まずはプロムスをご存知ない方のために簡単な説明を。プロムスって「プロムナード・コンサート」の略称で、つまりは「散歩の場所で行うコンサート」みたいな意味なんだそうです。約2カ月にわたり、ロイヤル・アルバート・ホールという、日本でいう武道館級の巨大会場で毎日クラシックのコンサートが行われるというのもすごいのですが、最大の特徴はその気軽さ。
世界一流の音楽家やオーケストラが演奏するというのに、当日券の値段はなんと破格の5ポンド(約866円)なんです。ビール2杯でこれぐらいの料金しますからねえ。
ただ当日券をゲットするためには、当日券購入の行列に並ばなければなりません。ということで、この日は夕方6時15分ぐらいに溜まりに溜まった仕事を投げ出して、ホルボーン駅近くにあるオフィスを出発。6時45分ぐらいに、会場であるロイヤル・アルバート・ホールのドア10の前から続いている列の最後尾に到着しました。
まあ確かに長い列なんだけど、ウィンブルドンに比べれば大したことない、と経験者の余裕。この日のコンサート開始時刻となる7時半の5分前に無事に入場できました。
当日券専用となるアリーナ席は、オーケストラの真ん前に位置しています(ちなみに天井座敷に相当するギャラリー席も当日券用)。立見席であるという点をのぞけば、もしかしたら一番良い席じゃないかと思ってしまうぐらい。
周りの観客はものすごいカジュアル。地面にシートを敷いてサンドウィッチをパクつきミニ・ピクニックしている者あり。Tシャツにハーフ・パンツ姿でサイダー飲んでいる者あり。散歩の場所で行うコンサート=プロムスってこういうことなんだと実感。
ただいざ演奏が始まって気付いたのですが、マナーの悪い観客がいっぱいいたのがちょっと残念。フラッシュ付きでカシャカシャ音立てて写真撮っている人いっぱい。サイダーの中に入っている氷をガリガリ噛む人がいたり、長時間立っているのがつらいのか、足の重心を動かす度に小銭だか鍵だかをジャラジャラさせてしまう人がいたり。
もしかしたら、「初めてのクラシック・コンサート」という人が多いのかもしれませんね。感心したのは、マナーの悪い人たちに対して、周囲の観客が「ちょっとその音が気になるんだ。もうちょい静かにしてくれたらうれしいな」みたいな感じで紳士的にきちんと伝えてあげていたこと。そんな教育的指導の成果もあって、後半になると騒音が随分少なくなった気がする。
とまあグチグチ言いましたが、5ポンドで一流のオーケストラの演奏が聴けるというのはやっぱすごい。この日最後の曲となったベートーベンの交響曲第6番「田園」の演奏が終わると、観客は拍手大喝采。アリーナ席がオーケストラにあんまりにも近いものだから、周囲を見渡してみると、僕自身が万来の拍手を一身に浴びているような錯覚にとらわれました。それからクイーンの「ウィー・ウィル・ロック・ユー」みたいに地面をダンダン踏み鳴らして、観客がアンコールを要望。このリクエストに応え、オーケストラはスイスのフォークソングをアレンジしたという曲を演奏してくれたのですが、ここではパーカッションの人がほかの楽員の頭を使って楽器を鳴らすなどのおふざけを見せてくれて、会場は大爆笑でした。こういうユーモアが憎いね。
プロムスは9月13日まで行われています。当日券の買い方がこちらのページに載っているので、よろしければご参照ください。
それではごきげんよう。(籠)