イギリス的出会い系広告批評2011 ~ものは言いよう編~

By 編集部員(籠)

キーン、コーン、カーン、コーン。皆様、こんにちは。イギリス的出会い系広告批評界のXファクター、(籠)です。

今回は、英紙に掲載された出会い系広告の文面を吟味し、その広告を出した人物がどんな人であるかを見抜くための演習を行います。

今週も、「ガーディアン」紙の別冊「guide」に掲載されている「soulmates」のコーナーから、いくつか例を拾いながら授業を進めていきましょう。まず、最初の出会い系広告はこれ。

FULL OF LIFE AND FULLER FIGURE――Curvaceous F, 41, 5’10’’, no ties, enjoys the arts, eating out, socialising & travel. Seeks tall, witty gent for fun times
(ふくよかな人生と、もっとふくよかな体型。身長178センチ、41歳の独身女性です。芸術、外食、社交と旅行が好き。楽しい時間を一緒に過ごしてくれる、背の高い、機知に飛んだ男性との出会いを求めています)

この文面を見て、「ぽっちゃり好きの俺好みの女性かも」と思った男の人、しっかりしてください。「ふくよかな人生と、もっとふくよかな体型」という、語呂だけは良いキャッチフレーズを目にした時点で、無差別級の重みを感じるべきです。身長178センチと言っているので、第66代横綱の若乃花をほんの数センチ縮めたような体型を思い浮かべておけばほぼ間違いありません。

また「外食が好き」と言っていますね。「素敵なレストランにお供してくれる美女がいると確かにいいな」なんて思った人、早く目を覚ましてください。この人にとって外食とは、マクドナルドでビック・マックのスーパー・ラージ・セットを食べることを意味しています。さらに悪びれることなく「あっ、コーラはダイエット・コークでお願い!」って茶目っ気たっぷりに言ったりするので、思わず張り倒したりしないよう十分に気を付けなければなりません。

すみません。冒頭からテンションのメーターが振り切れてしまいました。でも男性諸君は本当に気を付けないと、僕みたいに「出会い系で見つけたあの女の子、かわいかった?」と聞いてきた男友達の間でしばらく笑い者にされることになります。えっ? 今「僕みたい」って言ったって? 言ってないです、そんなこと。私語は慎んでください。

ええと、ここら辺で、女性が出した出会い系広告ばかりを取り上げるのは不公平だという声が聞こえてきましたので、男性からの出会い系広告も例に取ってみましょうか。

HANDSOME CHARISMATIC MODEL THERAPIST――Passionate, positive, provocative, intelligent, assertive, creative man, 39, seeks cultured, artistic, quintessentially, feminine lady
(ハンサムでカリスマ的なモデルのセラピストです。情熱的で、前向きで、刺激的で、知的で、堂々とした、想像力溢れる39歳の僕が、文化的で、芸術的で、本物の、フェミニンな女性を探しています)。

「ハンサムで、カリスマがあって、知的で、さらにセラピーもできるだなんて完璧じゃなーい!」と心躍らせてしまったあなた、具合は悪くないですか。よーく目を凝らして、文面を見てみてください。「ハンサム」と「カリスマのある」という形容詞は、「モデル」と「セラピスト」のどちらにかかるのでしょうか。

ていうかー、あたし的にはー、後半部分にやたらめったら入っている濁点のうちー、せめて一つだけでいいから冒頭の一文に入れて欲しいしー。ごめんなさい、今、古臭い女子高生の亡霊が乗り移ってました。ともかく、「ハンサムでカリスマ性のあるモデル兼セラピスト」と、「ハンサムでカリスマ性のあるモデルにまじないをかけることを仕事としているブ男」では雲泥の差があります。まあ、ほぼ間違いなく後者でしょうね。

soulmates

赤線を引いてお勉強してみました

はい、今日の授業はこれまでです。また来週。(続く)

実践で使える! イギリス的出会い系広告の言葉

今週の用語「Curvy」
日本語訳: 「曲線美を持っている」「豊満な」が直訳。でも、単にデブっているだけのことが多いので気をつけましょう。

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