イギリス的出会い系広告批評 ~最終回~
By 編集部員(籠)
皆さんこんにちは。イギリス的出会い系広告批評のパイオニア、(籠)です。本講座も、今回で早くも3回目を迎えました。
この講座を続けていく中で、「なぜ女性が男性に対して出した広告ばかりを扱うのか。不公平だ」というご意見をいくつかいただきました。ごもっともです。ついつい、個人的な興味がおもむくままに突っ走ってしまいました。ということで、ご要望にお応えしまして、今週は、男性→女性の出会い系広告を主なテキストとして扱っていきたいと思います。
ただその前に、もう一つだけ「女性→男性」広告を紹介させてください。本講座を通じて参考書として利用してきた、5月22日付「タイムズ」紙の出会い系広告で見つけた、私のお気に入りの一文です。
「A sleeping beauty needs to be awoken with a kiss. Where is my Prince?(眠れる美女が、目覚めのキスを待っています。嗚呼、私の王子様は一体どこにいらっしゃるの?)」
自分自身を眠れる美女に例えることで清楚で可憐なイメージを構築することに成功し、かつ広告を目にした男性諸君を王子様気分にさせてくれる、佳作だと思います。過去最高点となる3点を差し上げます。
出会い系広告を愛する女性読者の皆様、大変お待たせしました。男性陣からの作品の登場です。
前述の通り、女性陣は「若くてセクシーで魅力的」であることをアピールする傾向があるのに対して、男性陣は、「良い仕事に就いていて、知的で、かつロマンティック」という点を強調するきらいがあるようです。紹介文には、金融関係、弁護士、実業家、音楽家、作家、俳優など人気職業がずらりと並んでいます。
でもねえ、金融関係ってあなたもしかしてサラ金取りじゃないのとか、俳優って「木の役」とかじゃないのとか、思ってしまうんですよねえ。えっ、僕が嫉妬してるんじゃないかって誰か言いましたか。
そんな中で、「僕はしがない男だけど、それでも君が好き」みたいな紹介文を目にすると、胸を打たれます。再び、5月22日付「タイムズ」紙から抜粋。
「Miserable, lonely and boring Libra, 62, seeks female to share long, dull, winter evenings and awkward silences(みじめで寂しがり屋で退屈なてんびん座の62歳が、長くて退屈な冬の夕方に気まずい沈黙を共有してくれる女性を募集します)」
一文の中に、「退屈」を意味する言葉が2回も出てくるのですから筋金入りなんでしょうね。星座にこだわるキュートな一面も持っているみたいです。その素直さと可愛さに打たれて、1点あげましょう。
こんなのも、見かけました。
「Are you the kind of lady who might be willing to reintroduce me to the female touch after years of platonic deprivation(あえて訳さないでおきます)」
点数つけた方がいいですか。マイナス2点にしておけば、皆さん納得してくれるでしょうか。
ええと、随分と後味が悪い中、大変恐縮ですが、過去3回にわたって続けてきた「出会い系広告批評」もとりあえず本日が最終回となります。出会い系広告を愛する皆様のお役に少しでも立つことができたら幸いです。それではごきげんよう。(籠)