『「クジラを食べるな」その理由』特集について

2007年5月22日 By 編集部員(籠)

5月17日発刊1096号に掲載した、『「クジラを食べるな」その理由』と題した捕鯨問題を扱った特集には、ちょっといつもとは違った形で様々な反響がありました。そこで本日は「編集日記」の場をお借りして、本特集への企画者として私からの見解を述べさせていただきたいと思います。

「いつもとは違った反響」というのは、記事の内容に対して強い抗議が寄せられたということです。それらの主なものは、ニュースダイジェストが意図しているにせよそうでないにせよ、「反捕鯨プロパガンダに荷担している」といったものでした。

この際なので正直に言ってしまうと、私の個人的な立場は「反捕鯨に反対」です。というか、「捕鯨反対キャンペーン」に対して強い違和感を覚えています。まだ私がロンドンで学生をしていた頃、反捕鯨で一致する異なる国籍を持つ学生6人を前にして、どれだけ反捕鯨キャンペーンが虚構に満ちているか、というテーマでプレゼンしたこともあるくらいです。

でも、今回は違う形で進めたかった。英国ニュースダイジェストは、在英邦人に分かりやすい形で、英国の様々な事象を取り上げる週刊誌だからです。誌面作りに際しては、いつも「英国でしか知ることのできない情報や価値観を提供する」ことをモットーとしています。英国が反捕鯨国である以上、彼らがなぜ反対するのか、なぜあそこまで真剣になって反捕鯨を訴えているのか。それを知るのって意味があるし、そしておもしろいことなのではないか、そう思ったのです。

特にIWC総会を控えたこの時期、英各紙には毎年のように「捕鯨国・日本」を厳しく非難する記事が並びます。でもそれらの記事を読むだけじゃ、なぜ反捕鯨派が怒っているのかがさっぱり分からない。彼らも信念を持って行動しているのだとすれば、その論理がどのように構成されているかを知りたい、そんな意図がありました。だから、あえて極端な例としてそれぞれ異なる理由で捕鯨に反対している環境団体を取材対象として選びました。

ただ、これが結果的に何人かの読者に対しては「反捕鯨派の意見を垂れ流ししている」との印象を与えてしまった。そういった色々な反応を知ることができるところが、こういった企画の一番難しい部分であり、またおもしろい部分なのかもしれません。

というわけで、捕鯨賛成派の方々からは顰蹙を買ってしまったようですが、実はそういった方たちにも喜んでもらえそうな、捕鯨問題をテーマとした新たな企画がもう頭には浮かんでいるのです。ただこれを実現するには、たぶん調査と取材にものすごく時間がかかる。でも私がニュースダイジェストで働いている間に、是非実現させたいと思っています。なので、今回の特集に強い不満を持たれた方は、それまでもうちょっとご辛抱ください。(長野 雅俊)

追伸

本企画に限らず、読者の皆様からいただいたメールやお手紙は全て読ませていただいております。これからも、誌面に対する要望やご意見などございましたらお気軽にお知らせください。皆様からのご意見お待ちしております。

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