和太鼓奏者TAKUYAさんの公演にまた行きたい
5月23日、ドイツ在住の和太鼓奏者TAKUYAさんの公演に行ってきました。
これがもう度肝を抜かれたんですねぇ。
乏しいながらそれまで持っていた和太鼓のイメージが完全に覆されました。
TAKUYAさんはヨーロッパでプロの和太鼓ソリストとして活躍されている方で、この度ご縁があり、前編、後編の2回にわたるインタビューでいろいろとお話しさせていただいたんですね。
和太鼓に人生を賭けている様子が言葉の端々からビンビン感じられるほど大変情熱的な方でしたが、それと同時に「和太鼓を打つことがとにかく楽しくて仕方がない」という軽やかな印象も受けました。
さて、もともと私の中で和太鼓といえば、夏のお囃子のような軽快なリズムで聴いているだけで気分が高揚するような、はたまた一切無駄のない筋肉をつけた漢!!!たちが大太鼓を力強く打ち鳴らしている、そんな両極端なイメージがありました。はて、それをソロで演奏するとは一体どんな感じなんだろう、と期待を胸に会場へ。

会場はロンドンのキングス・プレイスでした
会場に入ると多くの観客の方々が開演を待っていました。日本人、外国人は半々くらいで、若い人から年配の方まで幅広い世代の方がいらっしゃいました。

TAKUYAさん お、雄々しい…!
会場はほぼ満席。席に着いてドキドキしながら待っていると、ドイツ在住の写真家やプロデューサー業など多彩なアート活動で活躍されているJUMPEITAINAKAさんによる幻想的な映像が流れ始めました。今回は写真や動画による演出を担当されていたようです。
そしてTAKUYAさんが登場。大太鼓の前に静かに立ち、腕を振り下ろした瞬間、
ドーーーン!!!!
と会場が真っ二つに割れるんじゃないかと思うくらいの大きな音が鳴り響きました。
本当に雷鳴を真横で聞いている感じで、日本人の私ですら「うわ、びっくりしたな」と思っていたら、後ろの外国人のご夫妻が驚きすぎて笑いが出ていたり、前にいた老夫婦の方が席でちょっと浮き上がっていたりと、会場にプチどよめきが起こりました。
そして演奏が始まります。
「ソロ」という言葉のイメージから静かに見せていく部分も多いのかな、なんて勝手に考えていましたが、とんだお門違い。最初から最後まで躍動感がすごすぎました。

演奏はもちろんですが「舞い」をも見ている感じでした
腕が引きちぎれんばかりに力の限り打っている場面でも、一定のリズムを刻んでて、荒々しい中に恐ろしいほどに研ぎ澄まされた正確性がある。まるでドラマーのようなスピード感なのに、持ってるのはそれなりの太さの撥(ばち)。素人ではありますが、機械のような正確なリズムを己の体一つで作り上げていることがありありとわかりました。筋肉どうなっているの!?と思わずにはいられなかった…
撥の残像がはっきりと見えるくらいの速さだったもので、見ているこちらの体に乳酸が溜まるような、でもそれを無視して真っ直ぐ進み続ける様子を息をのんで見届けるシーンがいっぱいありました。インタビューの時に「アスリートと同じような食生活、体力作りをしている」と聞いていたんですが、本当にアスリートそのものでしたね。
ええ、もうお気づきかと思いますが、もうとっくに私の知っている和太鼓ではありませんでした。
また、同じ和太鼓でも音の強弱が違うだけで、全く違う聴こえ方がするのも印象的でした。小さい音は本当に鼓動のように、大きい音は地響きや雷鳴のような、とにかく自然界から生まれたような絶対的な爆音。音が爆ぜるというんでしょうか。私の肺は公演の間ずっとアンプのように震えていて、自分も演奏に参加しているかのような気分になりました。
そしてさらに驚いたのが歌の演出。
TAKUYAさんはこれでもかと激しく打ち続けた直後、突如プツッとその緊張の糸が切れ、急に歌を静かに歌い出されたんです。呼吸が乱れて当然な場面なのに、別の肺をお持ちなんですかというくらい息が全く乱れていません。
ちなみに今回の公演では、和太鼓の合間に歌やお琴、笛などなどたくさんの演出があり、次はなんだろう、とワクワクするような展開だらけでした。特にお琴の絃を細い撥で太鼓のように打ち、お琴の龍腹(裏面)をコンガのように手でタンターン!とリズムカルに叩いているのを見た時は、オイオイなんかとっても楽しい感じだぞ! とテンションが上がりました。客席で縦ノリでリズムを刻むお客さんの姿もいらっしゃいましたね。

こんな演奏見たことないぞ!?
そんなわけで、和太鼓以外のたくさんの楽器の演奏も拝見したわけですが、どのシーンでも共通するのが、その立ち姿や所作の美しさでした。撥を天高く構える所作、打ち鳴らした後にまた元の位置に流れるように戻っていく腕など、どの動きを見てもまるで一つの糸のように動作がつながり、かつ絹のように滑らかで、思わず目が釘付けになってしまう、そんな動作が散りばめられていました。耳からも目からも美しさが入ってきて、その動き一つひとつを見逃してはなるまいとのめり込んで聴いてしまう。そんな雰囲気が会場からすごく感じられました。
そんなわけで、80分の公演があっという間に終わってしまい、TAKUYAさんが公演最後の挨拶を始めたとき、「え?もう終わったの?」と不意を突かれたお客さんは私だけではなかったようでした。目が離せない演出が多すぎた(笑)。
最後はアンコールを促す拍手や掛け声が起こり、再度登場してくださったTAKUYAさん。アンコールの際は観客による手拍子とご自身が打つ太鼓の音で、会場の一体感が感じられました。
いや〜、終始圧倒されてしまいましたねぇ。
技術の高さ、演奏による感動、などなどいろいろな思いが頭を駆け巡りましたが、
1番感じたことは、「エネルギッシュでエンターテインメント性に満ちあふれていた和太鼓だった」というところでしょうか。見ているだけで元気がもらえる、次は何が起こるのだろうとワクワクさせてくれる。
和太鼓をちょっとでも知っているからこそ、楽器の持つ可能性を目の当たりにして感動が倍になりました。
和太鼓を一度は聞いたことがある日本人の皆さまにこそ、ぜひ行っていただきたい公演でした。また、ロンドンで公演があったらまたこの驚きを体感しにいきたいです。(葛)
▼TAKUYAさんのプロモーション・ビデオ。この一定のリズムが聴いていてとても心地良いんですよね