イギリス人が経営する日本酒醸造所に行ってみた

皆さまこんにちは。(葛)です。

ここ数年、ロンドンでは今まで以上に日本の食べ物、飲み物が楽しめ、また文化などを紹介する博物館・美術館での企画展が見られるようになっています。それだけ日本への注目度が上がっていることを意味しているのかなと思うと、日本人としてとても誇らしい気分です。

さて、先日ロンドン・ブリッジから徒歩10分ほどの場所にある日本酒の醸造所兼タップルーム(お酒が飲めるフロア)、KANPAI LONDON CRAFT SAKEさんに遊びに行ってきました。ロンドン・ブリッジ駅はもうロンドンのど真ん中の場所です。以前はここから少し南のPeckhamにあり、昨年現在の場所に移転しました。

さて、日本酒の蔵元といえば、たとえば水の綺麗な場所に立地していることが多いような気がしますが、はて、この大都会ロンドンで醸造される日本酒とは一体…?

こちらがそのお店です。この一帯はバーモンジー・ビア・マイル(Bermondsey Beer Mile)と呼ばれ、クラフト・ビールの醸造所が軒を連ねるロンドン有数の観光地でもあります。

いきなり余談ですが、クラフト・ビール好きの友人が日本からロンドンに遊びにきた際にこのエリアに連れてきました。当時は1ポンド=200円の地獄の円安時期だったにも関わらず、総合的に見て「安い」、スタッフが皆フレンドリーで、ビールについて聞くと皆情熱を持って解説してくれて最高すぎる、と大絶賛でした。はしご酒が好きな呑兵衛、またビール好きの人にはぜひ訪れてほしいスポットの一つです。

KANPAIさんは、このビア・マイルの序盤にあります。設立者のトムさん、ルーシーさんご夫妻は、日本を訪れたときに日本酒と出会いました。トムさんはもともとバリバリの金融マンでしたが、すでに賑わっているクラフト・ビール業界ではなく、あえてこの未知なる日本酒の世界に飛び込み、日本で本格的に酒作りを学び、2016年に醸造所を設立したそうです。

この後紹介する動画でトムさんの姿が映ってますが、真面目な姿勢は見ての通りで(笑)、酒について語り出したら止まらない、情熱の塊のような人。ここまでのお店の歴史や苦労話、家族の話(この間子供がナーサリーから風邪もらってきちゃってうつっちゃって大変でさー)などなど、あけすけに話してくれてとっても気さくな方です。

数年前にこのお店を訪れたことがあるのですが、酒の醸造メンバー、バー・スタッフともにほとんど変わらぬ顔ぶれで、トムさん含めそれぞれが自分の業務にかける想いや、酒に対する情熱、そして日本酒に対する強いリスペクトを感じました。目に見えないものだからこそビンビンに感じられてう、うれしい(涙)。

今回は、酒造りの様子も特別に見学させてもらいました。

お酒の仕込みにあたり、イギリスの気候(湿気少ない)、また水質の違いなど、乗り越えなければいけない課題がとても多かったそう。特にロンドンの水は超硬水。これらを日本酒に適した水にするための特別な機器など、日本の伝統的なやり方に限りなく近づけるための設備を特注で準備し、また酵母作りのための麹ルームを完備したりと、聞いているだけで気が遠くなるような工程を経て、今の姿があるそうです。

日本で酒造見学をしたことがありますが、場の見た目やスタッフの服装などは違うものの、醸造メンバーが醸し出す雰囲気はまさに職人が放つオーラそのもの。トムさんから「質問あったらじゃんじゃん聞いちゃって」と言われていましたが、なんだか逆に迷惑になってるんじゃないかと思ってポツポツとしか語りかけることしかできず、いやもうむしろ私邪魔なのでここ去りますね、という気分に(笑)。もちろん質問した時はとても細かく丁寧に教えてくれ、「酒造りは本当に深くて探求心が膨れる一方だわ」という、素敵な言葉までいただきました。

お酒は常時入れ替わり、ボトルも在庫がなくなったら終了です。んうまい! 味の感想はこの後の動画にて紹介しています

タップルームで提供されるお酒は、日本人がイメージする「これぞ日本酒!」な飲み口の大吟醸から、ワイン感覚で飲める従来の日本酒にアレンジを加えたものなど、実に多彩な種類の日本酒があります。もちろん生酒など、フレッシュさ半端ない日本酒も用意されています。伝統的な手法をベースにしているので、アレンジされたお酒にも日本の味が存分に感じられる、なんとも尊い日本酒たちが勢揃い。

うれしい反面、種類がありすぎて選べないんですが……と素直に相談したところ、辛口か甘口か、普段はどういうお酒が好きなのか、などなど、まるで病院での問診のように事細かく聞いてくれ、試飲もさせてくれました。

ちなみに理想の酒とのマッチングを目指すこの手厚いサービスは、必要とあらばお客さん全員に行っていて、お店のオープン中も、お客さんに語りまくるスタッフの姿を何度も目にしました。プライド持って日本酒を勧める姿勢、とてもかっこよかったです。

バーの前にはオーダーを待つお客さんのちょっとした列ができていましたが、皆きちんと列になって待ち、スタッフさんとの会話を楽しみながら本日の一杯を選んでいました。上質な一杯を求めて未知なる日本酒のタップルームを訪れる、そんな熟成された楽しみ方をここロンドンで見ることができました。

動画では、お店についてもっと詳しい情報をのせています。ぜひご覧ください!

★KANPAI LONDON CRAFT SAKE
48 DRUID STREET, LONDON BRIDGE, SE1 2EZ
水・木 17:00-22:00
金 17:00-22:30
土 12:00-22:30
日 12:00-19:00

定期的に入れ替わる10種の日本酒専用タップ、ボトルの日本酒、また日本や海外で作られた日本酒などさまざまな日本酒のほか、クラフト・ビール、ウイスキー、ジン、焼酎、泡盛、梅酒、カクテル、ノンアルビール、ソフトドリンクなど幅広いドリンクのほか、フードもあります(お土産、贈答用に日本酒のボトル購入もできます)。ここで造られた日本酒は季節もの、在庫がなくなり次第終了など常時入れ替えがありますが、その分いつ訪れても新しいお酒に出合えます。また、土曜開催の醸造所見学など、さまざまなイベントもあり! 最新情報はサイトからご確認ください。
https://kanpai.london/

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