ビジネス日本語スピーチ・コンテストに行ってきた

by 編集部員(籠)

皆様こんにちは。「男性からも女性にプレゼントを上げる」という英国でのバレンタイン・デーの習慣に則って義理チョコを女性社員に配るべきかかなり迷った揚げ句に結局今年も何もできなかった恥ずかしがり屋の(籠)です。バレンタイン直前の2月12日にロンドンのSOASで行われた「ビジネス日本語スピーチ・コンテスト」の本選の様子をご報告申し上げます。

実は僕、このスピーチ・コンテストを毎年ものすごく楽しみにしているんです。たぶん過去10年ぐらい皆勤賞。毎年仕事を放り出して、たっぷりと見学させてもらっています。特に今年は相当にレベル高くて、随分と堪能させていただきました。

ビジネス日本語スピーチ・コンテスト

コンテストの出場者は、大勢の観客と複数の審査員の前でスピーチするんです

1位から3位と特別賞の受賞者とスピーチ内容については、「『地産地消』から『マラソン接待』までユニークな考察を披露」と題した記事をご参照ください。ここでは同記事では紹介しきれなかったけれども、「なるほど、すごい」と思わず唸ってしまったそのほかの出場者の皆さんのスピーチを紹介させていただきます。

まずは、今大会における本選のトップ・バッターとして出場したアレキサンダー・ハートさん。iTunesが普及した影響によってCDの売れ行きが停滞する中、エイベックス・トラックスなどの大手は新規のビジネス・モデルに向けて既に舵を切っているという日本の音楽業界の現状について語りました(もちろん彼にとっての外国語となる日本語で)。この文脈で、今や日本を代表する(って言っていいのかな)アイドルとなったAKB48を「付加価値を提供する」音楽モデルとして紹介していたのには目から鱗が落ちちゃった。今まで「秋元康なんかに踊らされたりしない」なんてニヒルな態度を取っていただけで何も分かっちゃいなかった自分を反省。

続いて、日本の企業文化における謝罪の意味と機能について話したのがヤン・マリスカエルさん。よく日本人の間で「外国は訴訟文化だから簡単に謝ったらダメ」とか「日本人はペコペコ謝ってばかりいてみっともない」とか言いますよね。マリスカエルさんの見解では、英国では謝るというのは「最後の手段」であるのに対して、日本人はまず自分の非を認めることで「名誉挽回の機会」にするというんです。ユニークでしょ? 日本の謝罪文化をこれだけポジティブに捉える視点ってなかなかないんじゃなかろうか。

外国人の多くが興味を持つ日本人の「本音と建前」というテーマについて、日系企業で働いた経験を踏まえながら論じたのがクリス・ワードさん。英国では交渉事となるとまずお互いが最大限の主張を明確に述べた上で重度が少ない事項を除外していくが(実感としてすごくよく分かる)、日本でははっきりとは言わないままに話し合いが進められていくから忍耐力が必要とされる、と仰ってました。ワードさんが顧客に「無理」と言っているのを知った上司が「『難しい』と答えた方がいい」とアドバイスしたというエピソードも。ご苦労察し致します。

そして、実は北海油田の開発がきっかけで生まれた仕組みであるというプロジェクト・ファイナンス(知らなかった)に最近では日本の銀行も熱心に取り組むようになったという非常に専門的な話をかみ砕いて話してくれたのがジョナサン・キングさん。コンテストの関係者も仰っていたのですが、前大会で準優勝を果たした彼が、今回は入賞できなかったというところに今大会のレベルの高さがうかがえます。

優勝者であるミハイ・スクンピエルさんのスピーチは、ここから動画で見ることができます。目をつぶって聞くと、日本人が話しているとしか思えません。ぜひぜひご覧ください!

リンク:
英国で暮らす日本語学習者が語る 私たちが見た日本(4 April 2013 vol.1384)
英国で日本語を学ぶ100人に聞きました – 好きな日本映画(27 May 2010 vol.1251)
英国で日本語を学ぶ100人に聞きました – 好きな企業・ブランド(23 April 2009 vol.1195)
日本語って難しい?

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