ダイヤモンド・ジュビリー「女王と雨と史上最長の行列」
By 編集部員(月)
6月3日、大雨の予報にもめげず、行ってきました、エリザベス女王の即位60周年記念「ダイヤモンド・ジュビリー」のメイン・イベント、テムズ・ページェント。1000艘以上もの船がテムズ河を下るという、壮大なスケールのパレードです。
少しでも良いところで女王の姿を見たい! という隠れ女王ファンの(籠)さんが前日に河岸の下見を決行。周辺を巡回していた警備員にも相談した結果、プライベートの敷地ではなく、最寄りの橋が封鎖されず、写真を撮るときに対岸の見た目が良いところ、などという関門をクリアした、バタシー発電所の真正面が良いだろうという結論に至りました。
そして当日。9時半ごろVauxhall駅を出ると、既に大勢の人が河岸のベスト・スポットを確保しています。しかし隠れ女王ファン(籠)さんのお陰で、無事、発電所正面の一番前という素敵な場所に陣取ることができました。
パレードが始まるまでまだ4時間半近くあるというのに、旗を振り、国歌やルール・ブリタニアなんかの歌の練習をし始める周りの人たち。その大多数が高齢の英国人です。皆とっても元気。私たちの後ろの女性なんか、「柵があるのが邪魔ね。パレードが始まったらよじ登っちゃいなさいよ」などと私たちにそそのかすほどのエネルギーに満ち溢れています。
時折、音声チェックのためなのか、オケの音楽を流す船なんかが通ったりしてそれなりに盛り上がりつつ、パレードが始まる瞬間を待っていましたが、ここで本番前に忘れてはならない大切な準備が一つ――トイレです。通りに出ると、目の前にひたすら伸びる一本の列。嫌な予感がして最後列の女性に聞いてみると、案の定、トイレの行列でした。トイレの実物なんか遙かかなたにあって、全く肉眼では観測できないほどの長い列。この人生最長の列に並ぶ間に、3人の女性と知り合い、別エリアのトイレの行列方法(ここは男女一緒で一列、一つ奥は一個室につき一列、など)、出身地、趣味、以前に見たことのある王室メンバー、最近の地下鉄の体たらくぶり、仕事上の悩み――なんかを話し込むことができました。これもイベントならではの醍醐味と言えるでしょう。
と、かれこれ1時間をトイレに費やしたお陰で、あっという間にパレード開始の時間に。鐘を鳴らす船が先頭を切ったかと思ったら、手漕ぎボートの群れが一斉に姿を現しました。色とりどりの小さな船がテムズを覆う様に、観客は皆、大歓声。船のパレードと言えば、ディズニーシーのパレードくらいしか見たことのない私も当然、この雄大な光景に大興奮です。
とにかく、手漕ぎボートやドラゴン・ボート、ナロー・ボートなどなど大小様々の船が繰り出したわけですが、個人的に特に印象的だったのが、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の船。ガラス張り(?)の船の中で、一流オケが優雅に演奏しているんです。ザ・英国。ちなみに秘密情報局(MI6)のオフィス前を通過したときには、映画007シリーズのテーマ曲を演奏したのだとか。粋ですねえ。そして意外にすぐやって来た王室専用船。真紅と金がまばゆい堂々たる構えの船が、悠々と目の前を通り過ぎていきます。そして金色のひさし(?)の下には、本日の主役、エリザベス女王とフィリップ殿下が! そのすぐ後ろには、チャールズ皇太子ら、王室メンバーもずらり。壮観な眺めです。かなりはっきりと女王の姿を捉えることができ、歓声を上げながら手を振っていると、何と女王がこちらを向いて手を振りかえしてくださるではありませんか。(籠)さんは「僕の方を見て微笑んでいた!」と言い張るのですが、それはさておき、確かに女王がとてもうれしそうだったのが印象的でした。私たちの目の前を過ぎていくのと同時に、船尾に向かって歩き出す女王を見て、周りのおばあちゃま方は、「女王が歩いてるわ!」「何で歩いているのかしら」「なぜ後ろに向かっているの?」と大騒ぎ。もう興奮のるつぼです。
前半戦にして王室専用船が去ってしまった後は、さながらミッキーマウスが去った後のディズニー・パレードのような微妙な静けさが。それでも音楽隊や合唱団の船、蒸気船がやって来てまた盛り返したのですが、次第に雨がざーざー降り出したため、最後は何となく自然解散状態に。列の一番前だったので傘もさせず、びしょびしょになりはしましたが、大英帝国の栄華を彷彿させる一大スペクタクル、心ゆくまで堪能できました。
帰り道、誘導する係員がいなくて、Vauxhall駅の改札口にたどり着くまで、雨の中、駅のまわりを1時間近くぐるぐる歩かされたのも、これまた英国のもう一つの顔ということで。
ちなみに今回撮った写真は、ダイジェストのFacebookに多数、アップロードしています。
また動画もちょっとだけ、撮ってみましたので、よろしければご覧ください。