川村元気さんのトークに行ってきた
10月4日、大英博物館に程近い「ロンドン・レビュー・ブックショップ」で開催された、国際交流基金の主催による川村元気さんのトークに行ってまいりました。川村さんは、「君の名は。」「電車男」「モテキ」「告白」といった大ヒット映画のプロデューサーであり、シュールな寓話小説「世界から猫が消えたなら」(2012年)の作者でもあります。
今回のトークは、この「世界から猫が消えたなら」の英語版、「If Cats Disappeared from the World」刊行(Picador社)を記念して行われたもの。通常営業を終えた後のブックショップにびっしりと椅子が並べられ、多くのファンが川村さんの登場を今か今かと待つ様子から、川村さんの人気振りが伺えました。
トークの中で、川村さんはこの本を書くことになった3つの理由をクリアかつユーモラスに説明してくださいましたが、特に興味深かったのは、映画と小説の違いについて語った言葉。「絶対映画にできないものを小説に書こう」と思ったという川村さんは、そこから「猫が消えた世界は映像にできない。だって、何をどう映せば猫が消えた世界になるのか分からない」と、この小説を書き始めたそう。映像プロデューサーならではの視点です。
トークでは、川村さんによる日本語版のリーディングもありました。本のストーリーは寓話的でユーモアたっぷりですが、その主題は、記憶や、生と死など、これまでに多くの作家やアーティストが取り組んだ永遠のテーマ。川村さんが現代的かつ新たな手法で描き出したことが分かります。ちなみに、川村さんの好きな英作家はイアン・マキューアン。好きな映画はフェデリコ・フェリーニの往年の名作「道」、ただし本作を書くにあたってベンチ・マーク的な存在だったのは、旧約聖書と映画「ビッグ・フィッシュ」(ティム・バートン監督作)だそうです。
トークは短いながら、とても得るところの多い楽しい時間でした。特に、何か物を作ったりする人であれば、おそらく川村さんのお話しに大きな刺激を受けたことと思います。(徒)