あなたはワンケイ行きますか

2008年5月27日 By 編集部員(籠)

ロンドンに長くお住まいであれば、「ワンケイ」という名の中華レストランをご存知の方は、かなり多くいらっしゃると想像します。レスター・スクエア駅から徒歩5分ぐらい。中華街の入り口にある、「あの店」ですね。

今から5年程前、初めてこのレストランに行った際にはそりゃびっくりしました。なんてったって、ウェイターが皿を手裏剣のようにテーブルの上に放り投げていく。注文の声がよく聞こえないと「アッ?」と客を睨みつける。地階に座っているお客さんたちは完全に萎縮し切って、まるで私語が禁止されているかのように、肩をすぼめながら黙々と食べている。その光景を最初に目にした時には、こりゃレストランというより、監獄内の食堂みたいだなあと思ったものです。

でも、物価高のロンドンにあって、その安さと気軽さが魅力なのでしょう、ワンケイはいつも大盛況。こんなにも飾らず、気取らず、無駄を省いたレストランというのはなかなかないのでは、とも思います。

実は数年程前に、ここには取材でお世話になりました。ただアポを取るのからして一苦労。何せ電話で取材を申し込んでも、話している途中で「ブチッ」と切るんですから、あの人たちは。それで仕方なく開店時間前にお店に直接出向いてみたら、皆さん実はとっても優しくて、忙しいお仕事の合間をぬって色々と話を聞かせてくれたのです(ごめんなさい、言い過ぎました。カメラを向けた途端に「俺たちにそれ以上近付くな」とすごんだ人も若干名いらっしゃいました)。

僕は今でも頻繁にここで食事していて、嬉しいことに、以来スタッフの方が時折サービスで付け合せを「on the house」してくれるようになりました。つまり、僕がスペシャル・フライド・ライスを頼むと、サービスとしてもう一品提供してくれることがあるんですね。もちろん、「質より量」が勝負のこの店では(失礼)、どの料理でもてんこ盛りです。一品だけでも満腹になってしまうところを、何とかフード・ファイトして、ご厚意に懸命に応えております。

また同店では、日本人の知り合いにも結構お会いするのですが、さすがにちょっと気まずいですね。「あなたもワンケイですか」「はい、実は数年前ほど前から週に1回ぐらいの割合で」「いやあなんだかんだ言っても安いし早いですから、私もなかなか止められないですね」って、まるで何か不道徳なことをしているかのように、言い訳ばかりが口から出てしまうのはなぜなんでしょうか。

でも、こんな風に色々と悪口言っても、今夜もやっぱりワンケイ行ってしまうんですね。これも愛なのだろうか。(籠)
ワンケイ
Wong Kei Restaurant
41‐43 Wardour Street, London W1D 6PY
Tel: 020 7437 8408

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