電話で結婚

2007年5月15日 By 編集部員(饅)

ロンドンにはアジア系の人々が多く暮らしていますが、私が住んでいる地区は、一瞬ヨーロッパであることを忘れるくらいアジア色が濃密です。イーストエンドのさらに東にある、あまり治安もよろしくない地区なのですが、リバプール・ストリートから電車で10分程という交通の便のよさに、なかなか引っ越しが出来ずにいます。

私の隣の部屋にも、パキスタン人の男の子(というか男性)が住んでいます。最近、この彼が結婚したらしいというニュースがフラットを駆け巡りました。「らしい」というのはほかでもありません。誰も花嫁の姿を見たことがないのです。彼は毎日朝早く起きて仕事に出かけ、夜は日が落ちてから帰ってくるのが日課で、女性の影など微塵も感じさせない人でした。一体、いつ結婚相手と出会ったのかしら……と不思議に思っていたところ、実は、母国にいる女性と国際電話で結婚した、というのです! そういえば、夜中によく電話をしている声が聞こえてきたっけ……。

この電話結婚、長年付き合った彼女との遠距離恋愛を実らせた、というわけではなく、「そろそろ嫁が欲しいなあ、ちょっくら探してみるか」といった経緯で実現したもの。パキスタンでは、家族や親戚が決めた相手と結婚するアレンジド・マリッジがまだまだ多いそうですが、この彼もそろそろお年頃で(というか、すでに30代に突入しているようですが)、かといって仕事と家の往復ではなかなか意に添う女性との出会いは難しく、英国-パキスタン間の電話結婚に至ったようです。お相手のことは、写真でしか知らないそう。う~ん、話には聞いていたものの、実際にこういう形の結婚を目の前にすると、結構衝撃的です。

電話結婚って、一体どんな風にするんだろう?気になるので、この彼にちょっと突っ込んで聞いてみました。彼はムスリムなので、本来ならばモスクで然るべき「誓いの言葉」を交わして式を挙げるそうですが、電話ではそうもいかず、お互いが電話口で夫婦となる合意を交わし、そこで立ち会った人が証人となって結婚が成立したそうです。花嫁は間もなく英国へやってくるとか。

インターネットを通じて国内外から花嫁を招く男性は日本にも多くいると思いますが、なかなか、実際に会ったことのない相手と結婚するのは度胸がいりますよね。でも、この彼にはそんな心配は全く無いよう。身内が勧めた相手を心から受け入れ、夫となったことを喜んでいます。そんな訳で、彼は最近心なしかウキウキしているように見えます。とってもデブっちょな人なのですが、話に聞くと、彼女の方も大柄とか。今は、夜な夜な電話で愛を育んでいるお2人のよう。末永くお幸せに。(饅)

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