なぜか見つかるなくし物たち

2007年4月17日 By 編集部員(饅)

お恥ずかしい話ですが、私はちょっと不注意なところがあって、よく物をなくします。出先で落としたり忘れてきたり、家の中で見当たらなくなったりと、結構頻繁に無くしてしまいます。今までになくしたものといえば、カサ、上着、コンタクトレンズ、写真アルバム、腕時計と、どうでもいいものから大事なものまで多岐にわたります。

無くした、というのは正しくないかもしれません。というのは、これらの物品は、なぜか不思議なくらいに私の元へ戻ってくるのです。

中学生の時に親に買ってもらった初めての腕時計は、部屋中を探し回っても見つからず、幼心に打ちひしがれました。無くしたことなどすっかり忘れ去った2年後、その時計はなぜか、探したはずのベッドの下からひょっこりと現れました。

コンタクトを落とした経験のある人は多いでしょうが、私はしょっちゅう落とします。昔ロンドンで結婚式に参加したとき、レジスター・オフィスの外に新郎新婦が現れた際、隣に立っていた女性が興奮して手を振り上げ、私の目にその手が当たって、勢いでコンタクトが飛び出してしまいました。明らかに片目が見えない……。それに気付いた彼女は真っ青になって、周囲を這いつくばって探してくれました。さらに、私が半ば諦めていたにも関わらず、他の人々も「この辺に落ちているかも」と、探し続けてくれたのです。探すこと数分、「あったー!」という叫び(まさに叫びでした)がおこり、コンタクトは奇跡的に発見されました。このコンタクトは、その後何度も自宅の洗面所で流されそうになりながら生還し、ハードとしても長寿の4年を全うしてお役目御免となりました。

最近無くして見つかったのは、カーディガンです。暖かくなったりまだ少し寒かったりと、気候の不安定な時期に重宝しますよね。ロンドンでカーディガンを1着も持っていなかった私は、渡英して間もなく購入しました。最近ではすっかり着慣れていたこのカーディガンを、先週、人の溢れるマーケットで落としてしまったのです。

先週末はとてもいい陽気で、ついつい外へ出たくなり、浮かれ気分でマーケットへ出かけました。暑くなったら脱げるよう、半そでのシャツに例のカーディガンを羽織って……。某マーケットへ到着すると、そこは、前に進むのも難しいくらい人の山でした。天気もいいし、みんな外出をしたいのは一緒ですから、その混雑を楽しもう! と、フラフラ歩き始めたのですが……ふと気がつくと、カーディガンがない。カバンの中へは入れず、持ち手にかけるようにしていたため、どこかで落としてしまったのです。特に高級ブランド品でもないのですが、肌のように親しんでいたカーディガンを落としたことで、一瞬パニックになり、その後私は、マーケットの通りを4往復しました。人込みの中、足元だけに注目しながら……しかし結局見つからず、泣く泣く諦めたのです。「新しい洋服を買うきっかけになるし」などと、自分にポジティブ・シンキングを無理強いし、トボトボと地下鉄駅へ向かって歩き出しました。

歩くこと数分。道路の脇に、見覚えのあるようなグレーの物体が……。ありました、私のカーディガン。マーケットに辿りつく前にすでに落としていたんです。誰かが気をつかって、道路脇の比較的キレイな石の上に、そっと置いておいてくれたようです。よく帰ってきたわね、と、ますますこのカーディガンに愛着が湧いたのでした。

なくすものは、いつも安価でお手軽な品ばかりです。特に残念がる必要もないものなのですが、やっぱり長く使っていた愛用品たちに去られると、落ち込みますよね。今のところ、まるで飼い犬のように私のところへ戻ってきてくれる小物たちを、今後も大事に使いたいと思います。(饅)

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