月と愉快な仲間たち
2006年10月3日 By 編集部員(月)
早くもネタ切れとなっている私。いかにシンプルな生活を送っているのか、こんなところからも伺えるというものです。というわけで今日は私のシンプルな日常を鮮やかに彩ってくれる、個性豊かな劇場仲間を数人、紹介したいと思います。題して「月と愉快な仲間たち」(どこかで見たタイトルだ……)。
まずご紹介したいのがジョージ(仮名)。推定40歳。チケット売り場でキューイングをしている時に出会ったのですが、私を見るなり目を輝かせて抱きつかんばかりに喜んでいたので、「え、劇場でナンパ? 困るなあ~♪」なんて思っていたら、「日本人だろう? シキを知ってる? トーホーを知ってる?」といきなりの質問攻め。なんのことはない、彼は世界中のミュージカルをこよなく愛するミュージカルおたくだったのでした。1つの舞台でも英国、米国、オーストラリア、中国、日本など、あらゆるバージョンのCDを買い漁っているというジョージ。今彼を惹き付けて止まないのが「劇団四季」と「東宝」なのです。「レ・ミゼのベッショ・バージョンは素晴らしい」というから何かと思えば、彼は別所哲也が主人公ジャン・バルジャンを演じた「レ・ミゼラブル」のCDが大のお気に入りなのだとか(蛇足ながら何故か英国には別所バージョンのCDしか売っていません。何故だろう……)。「コウジ・ヤマモトの声はなかなか良い」など、聞き方も半端じゃありません(ちなみにコウジ・ヤマモトとはマリウス役の若手役者、山本耕史のこと)。別所さんや山本さんも、まさかミュージカルの本場英国に、彼らの声を愛でている英国人がいるなど思いもしないでしょう……。良かったですねえ。
次にご紹介するのはマイク(これまた仮名)。33歳。彼はつい最近私のご近所さんに越してきました。もともとはイングランド北部で会計というお堅いお仕事をしていたマイク、引越しの理由は「やっぱり舞台を観るならロンドンでしょ」。いや、それはそうなんですけどね……。ちなみに現在はロンドンで就職活動中。次の会社も決まっていないのに舞台のためにあっさり仕事を辞めてしまうというのは、勤勉な日本人には理解し難いことです。おまけに「就職活動中」と言うわりには連日の劇場通い。いったいいつ活動しているのだろう……。この間はミュージカル「ウィキッド」のオープニングに全身緑色の服に身を包んで現われ、周囲の度肝を抜いたとか(「ウィキッド」の主人公は緑色の肌をしているのです)。……ああ、一緒に行かなくて良かった……。そういえば「ビリー・エリオット」ではピンクのチュチュ(ひらひらしているところだけ)を着て現われたこともあったなあ。
他にも1つのお芝居を観るためだけに、米大陸から週末だけやって来る人やら、「レ・ミゼ」を200回以上観ている人やら、さまざまなツワモノたちが私の周りを固めています。同僚などからは「オタク」と呼ばれ蔑まれている私ですが、彼らの中ではごくごく「普通」。いや、「なんて私は常識的なんだろう」と思い知らされる毎日です。こんな彼らに囲まれているからこそ、安心してオタク道にも突き進めるというもの。これからも「常識的に」観劇を楽しんでいきたいと思います。(月)